食生活を整えるコツ “栄養、食べ物を単体で考えない”
イライラする時→「カルシウムを摂ろう」
骨を丈夫に→「カルシウムを摂ろう」
と言うものの、では牛乳やヨーグルトを摂れば良いかというとそうではありません。
そもそもカルシウムを吸収するには、カルシウムの他、リンやマグネシウム、ビタミンDが必要です。とはいうものの、「骨を丈夫にしたい」→「カルシウムを摂らなければ」→「牛乳を飲もう」という人が多いのではないでしょうか。もっと言えばカルシウムを摂ればすぐ骨になるのかと言うと、骨に刺激を与えない限り骨にはなりません。つまり、運動をしなければ摂ったカルシウムは単に排出されるだけで骨にはならないのです。(カルシウムは体に吸収されにくいミネラルです。 カルシウム不足は骨以外にお肌の保水にも影響を及ぼし、骨年齢の高い人は、お肌も潤いがなく老けて見られます。また、カルシウムは、心臓の収縮や血管の柔軟性にもかかわり、カルシウム不足は動脈硬化、心臓疾患なども心配されると言われています。
とはいうものの、カルシウムは単独では吸収されにくく、それを助けるのにお酢の酢酸やクエン酸が有効と言われます。さらに、カルシウムの吸収になくてはならないものが上述のマグネシウムとビタミンDで、これらを一緒に取らないと、有効にカルシウムが吸収されません。反対に、カルシウム、カルシウムと「カルシウム」だけに気をとられてしまうと、カルシウムの摂りすぎで腎不全を起こしてしまうこともあります。「骨=カルシウム」というイメージが強いですが、マグネシウムも骨の成分の一つです。 カルシウムとマグネシウムをバランス良くとることで、丈夫な骨を維持することが出来るのです。そして、さらに、腸から吸収されたカルシウムが骨に付くのには振動が必要です。わかりやすく言えば、骨を作るには「運動」が必要なのです。どんなにカルシウムが吸収されても運動しないと骨にはなりません。)
「骨を丈夫に」と思った時に、「カルシウムをマグネシウムとビタミンDと合わせて摂ろう、運動もしないと!」と考える人の方は少ないのではないでしょうか。
また、別の視点に話を移すと、リンは過剰に摂るとカルシウムとくっついてカルシウムを体外に排出してしまう事実があります。つまり、カルシウムを充足させるには、リンを取り過ぎないように気を付けることも必要なのです。そして、さらに知っておくべきことは、今日の日本の一般的な食生活は「リンの摂り過ぎ」ということです。リンは加工製品のほぼ全てに大量に入っています。練り製品(ハム、ベーコン、ウインナー、かまぼこ、竹輪、など)、ソフト・ドリンクやスナック菓子にもたくさん入っています。また、ファーストフードやレトルト食品、冷凍食品にも多く入っています。さらには、肉類にも入っています。もっと言えば、カルシウムの供給源と見られている牛乳やヨーグルトにさえ入っているのです。自分の食生活を振り返ってみてください。加工食品や肉類をあまり口にしない方がどの位いるでしょうか。総じてカルシウムを体外に出してしまうリンを大量に摂取しているのではないでしょうか。
では、カルシウムから離れて別の栄養素について考えてみましょう。
「塩分を控えよう」→「塩辛いものを減らそう、醤油を少なめにしよう」、「味噌汁を半分残そう、漬物は食べないようにしよう」
と考える人が多いと思います。とはいうものの、塩分(ナトリウム)を考える際に、カリウムを切り離してはいけません。
そもそも塩分の摂り過ぎがなぜ悪いのかと言えば、体液の調節が上手く出来なくなるためです。血液中のナトリウムが増えると血液中の塩分濃度が高くなり、身体はこれを薄めようとして細胞内の水分を血液に注入します。人間の体液は塩分濃度が決まっているため、常にコレを一定に保とうとする働きがあるのです。すると血流量が多くなり、結果、血圧が高くなってしまいます。常に高い圧力がかかった血管は、疲労するのが早く、ボロボロになっていきます。すると体の血の巡りが悪くなり、体が上手く働かなくなってしまうのです。
ただし、体液の調節に関係しているのはナトリウムだけではなく、カリウムと対になっています。人の細胞内にはカリウムが多く、細胞外にはナトリウムが多く存在して、双方のバランスを上手く保っています。さらに詳しく言えば、細胞内にナトリウムが過剰にならないように、細胞膜にはナトリウムポンプというものが存在し、常に細胞内のナトリウムをくみ出して細胞外に送り出し、代わりに細胞外のカリウムを細胞内に取り入れる働きを行っています。例えば高血圧になるのはナトリウムの取り過ぎだけの問題ではなく、カリウムの摂取不足ということもあり得るのです。つまり、例えば「高血圧を改善したい」と思えば、塩分の摂取を少なくすると同時に、カリウムの摂取を増やすという発想が必要なのです。
実際、厚生省が推奨する1日のカリウム摂取量は、成人男女で2gですが、高血圧予防のためには3.5gと多めに摂取することが望ましいとされています。カリウムは野菜、果物、イモ類などに多いが肉類や魚介類など、比較的満遍なく含まれている栄養素です。中でもコンブなどの海藻類に圧倒的に多く含まれているので、みそ汁にトロロコンプを入れるなどして利用すると、高血圧に効果があるものと言えます。また、じゃがいもやさといも、果物ではバナナやグレープフルーツ、野菜では春菊やほうれん草、穀物では蕎麦やとうもろこしなどにカリウムは特に多く含まれるとされます。
「高血圧」=「塩分控えめ」ではなく、「同時にカリウムをたくさん摂る」という発想も必要なのです。
カルシウムや塩はほんの一例で、全ての栄養素は、他の栄養と補完し合って初めて様々な働きをする仕組みになっています。とはいうものの、それら全てを頭に入れることは不可能です。
では何に気を付けるべきかと言えば、「一つ一つの栄養素にこだわらない」ことが大切です。一つ一つの栄養素のことを単独栄養素と呼びますが、そもそも単独で働く栄養素などありません。栄養素が働くには、絶対に、他の別の栄養素が必要で、それが存在しなければ栄養素として本来期待される役割を果たさないどころか、その栄養素とセットになって働く栄養素の欠乏症を招いたりします。その上、セットとなって働く栄養素は1種類とは限らず、数種類に及ぶこともあります。
テレビや雑誌で「○○が良い」、「○○が良い」、それは理論的にはその通りと言えますが、その実行は危険です。何事も過ぎたるは及ばざるがごとしです。
キーワードは「まるごと食べる(野菜、果物:ただし無農薬、有機栽培のもの、魚(天然物で汚染されていないもの)、肉(放し飼い)」、「いろいろなものを食べる」ことです。一汁三菜、1回の食事で難しければ1日トータルの食事で、それも難しければ数日もしくは1週間単位でいろいろな食物を楽しむようにしましょう。ただし、油(脂肪)と砂糖、肉だけは控えめに、がポイントです。